大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和54年(ネ)1714号 判決 1981年2月18日

昭和五四年(ネ)第一九七〇号事件控訴人

昭和五四年(ネ)第一七一四号事件被控訴人

第一審原告

木村電工株式会社

右代表者

木村和樹

右訴訟代理人

川越庸吉

外二名

昭和五四年(ネ)第一九七〇号事件被控訴人

昭和五四年(ネ)第一七一四号事件控訴人

第一審被告

日本道路公団

右代表者

高橋国一郎

右代理人

塩坂富司

右訴訟代理人

坂田治吉

佐藤欽一

主文

第一審原告の控訴を棄却する。

原判決中、第一審被告敗訴部分を取消す。

第一審原告の請求を棄却する。

第一審原告は第一審被告に対し七二〇万五七四七円及びこれに対する昭和五四年一〇月一六日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は第一、第二審とも第一審原告の負担とする。

事実《省略》

理由

(一)  <省略>

(二)  本件のように、Y道路公団の道路の管理の瑕疵に起因する交通事故により、いわゆる個人会社でないX会社の代表者、従業員らを死傷させた場合、X会社は、右死傷による企業の固有の損害(企業の損害のうち、いわゆる肩代り損害を除いた損害)の賠償をYに請求しえない(最高裁判所昭和四三年一一月一五日第二小法廷判決、民集二二巻一二号二六一四頁参照)。その理由(イ)右請求を認めることは、賠償請求権者の範囲を拡げすぎることにより、加害者の予測ないし計算可能性を越えることとなり、加害者にあまりにも酷である。(ロ)X会社は代表者、従業員らに対する労務給付請求権の不安定性を企業計算のなかに織りこんでおくべきである。(ハ)それゆえ、X会社がいわゆる個人会社でない場合、加害者がX会社に損害を与える目的で代表者、従業員らに対し加害行為をしたときに限り、X会社に対する関係において不法行為の成立要件を充足し、X会社は、右加害行為による企業の固有の損害の賠償を加害者に請求しうると解するのが相当である。

<以下、省略>

(小西勝 坂上弘 藤井一男)

主張及び証拠関係、目録<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例